煙か土か食い物(舞城王太郎)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

腕利きの救命外科医・奈津川四郎に凶報が届く。連続主婦殴打生き埋め事件の被害者におふくろが? ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー!故郷に戻った四郎を待つ血と暴力に彩られた凄絶なドラマ。破格の物語世界とスピード感あふれる文体で著者が衝撃デビューを飾った第19回メフィスト賞受賞作。

むしろすがすがしい。

「好きな人はとても好きで、嫌いな人はきっと好きになれない。とりあえず1ページだけ読んでみては?」。この人を紹介するとき、一番しっくり来るのは、この表現から始まるんじゃないかと思います。

文庫本、というやや長めのものでは初めて読みましたが、個人的にはこれ、相当好きです。文章がほかのものと比べてもどこか頭一つ抜けている感じ。序盤・終盤は少しゆっくりめに、中盤は圧倒的なスピード感みたいなものを感じさせてくれました。一冊の本の中でチェンジ・オブ・ペースしてる感覚、とでも言うのでしょうか。

ミステリーという観点では、ものすごく複雑な問題の答えがわりとすぐに出てしまうし、犯人とかもういろいろ荒唐無稽なんだけど、それをものともしないのは、この文章力の為せる技なのかもしれません。