ファウストvol.4


文芸雑誌推定実売ナンバーワンを達成したVol.3から4ヶ月、『ファウスト』史上最厚の800ページというスケールで迫る最新号、『ファウスト』Vol.4。表紙はゲーム界きってのイラストレーター、西村キヌCAPCOM)が担当。

注目の第一特集は「文芸合宿! Live at『ファウスト』!!」、第二特集は「ミステリーのフロントライン」。特集以外にも、レギュラー陣の滝本竜彦ECCO』、西尾維新新本格魔法少女りすか』を掲載。

第一特集の「文芸合宿! Live at『ファウスト』!!」では、乙一北山猛邦佐藤友哉滝本竜彦西尾維新の若手人気小説家五氏による、3泊4日の「文芸合宿」の成果として、「上京」をテーマにした30枚前後の競作、および一人10枚前後、計50枚のリレー小説を掲載。すべてのイラストを担当するのは舞城王太郎です。『ファウスト』だけでしか読めない“伝説”必至の文芸コロシアム・ライブのリングサイドへようこそ。

また、第二特集の「ミステリーのフロントライン」では、北山猛邦浦賀和宏舞城王太郎の三氏に「ミステリー」とその「向こう側」が接する境界線上の「ミステリー」小説を依頼。イラストの担当は、北山氏の作品はゲーム『STELLA DEUS』『ペルソナ2』などのキャラクターデザインで知られる副島成記が担当。浦賀氏の作品は『LOVELESS』『アーシアン』の高河ゆんが担当。舞城氏は自身がイラストを担当します。「ミステリーのフロントライン」はいま・ここにあります。

また、小説以外にも、清涼院流水の人生成功ゼミナール『成功学キャラ教授』、東浩紀の評論『メタリアル・フィクションの誕生 動物化するポスト・モダン2』ほか、ますます充実する執筆陣を布陣。

文芸界を疾走する『ファウスト』からますます目が放せない!

発売から相当経って、ようやく小説は読了。今回はそれぞれ一言くらいずつの感想で。

▼第一特集
「子供は遠くへ行った」(乙一)。手紙形式。読み終わった後におお、と思わずうなってしまいました。
「こころの最後の距離」(北山猛邦)。数が減ってることには気づいてたけど、なるほど、と。最後まで行くと思わず逆から再スタート。
「地獄の島の女王」(佐藤友哉)。アンチというか、テーマ無視?テーマが言葉をちょっと出しただけなのはこの人だけ。ある意味さすが?
「新世紀レッド手ぬぐいマフラー」(滝本竜彦)。らしさ、と言う言葉が一番似合ってました。僕の中ではダメ人間の話の作り手としてイメージが定着してきました。
「携帯リスナー」(西尾維新)。普通にうまいなぁ、と。すごくきれいにまとまった印象。
「誰にも続かない」(リレー小説)。リレー小説は初めて読んだけど。こうも当初の流れからはずれていって予想もつかない結末へ流れていくものなのか、と。新鮮なもの読ませてもらった感じ。

▼第二特集
廃線上のアリア」(北山猛邦)。なんで「物理の北山」と言われてるのか、よくわかった。このトリックの立て方はすごいわ。
「ポケットに君とアメリカをつめて」(浦賀和宏)。SFと恋愛を混ぜたような印象。ミステリーの要素はちょっと微妙だったかな?
「夜中に井戸がやってくる」(舞城王太郎)。最初ホラーかと思った。そしてだんだんその路線が薄れてったかと思えば最後はミステリーっぽく。おお。

▼いつもの連載
ECCO」(滝本竜彦)。あと一話のようなのに、ここへ来て新キャラ。どう終わるのか、よく読めない。本になったら読もうかな。
「本格魔法少女りすか 魔法少女は目で殺す」(西尾維新)。小説版で一話はさんで最新話。小説版を読むと話がつながるけど、なくてもつながる。まだ先は長いね。多分。

▼コミック
「名探偵夢水清志郎探偵ノート」(箸井地図)。TAGROさんの新作を期待してたのでちょっと意外。どうやら連載っぽい。一話目のつかみとしてはいい感じ、かな?簡単な推理のお披露目。

▼全体を通して
今回面白かったのはやっぱり第一特集の文芸ライブかなぁ。それぞれの作者がそれぞれ一番得意なパターンに持っていってる印象。時間制限つきの短編って技術と個性、両方が引き出せるんだなぁ、なんて。この企画はまたやってほしいなぁ、とか思いました。あと、号を追うごとにだけど、だんだん安定してきてるのが目に見えて感じられます。方向性が固まってきて、それに向かって突き進んでる感じ、って言うんでしょうか。安心感のある次への期待を抱かせるようになってきた、とも言えそうです。たぶん次もまた買っちゃうだろうなぁ。