変身(東野圭吾)

変身 (講談社文庫)

変身 (講談社文庫)


平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしょうもない。自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された悩の持主(ドナー)の正体を突き止める。

どう思いますか。

僕の知る限り、今のところ世界で行われたことのない脳移植という事例を扱ったもの。徐々に徐々に心が侵食されていくのが、描写でもわかります。

ところで、この小説に関して、ひとつ興味深いくだりがありました。それは「脳移植によって、自分の脳の一部が変化させられてしまったら、それは元の自分と同一でありえるのか」というところです。全部を変えてしまったら、確かにまったく違うものになるのでしょう。でも、もしそれが一部だったら。また、その一部がどのくらいの割合だったら。どこまでが自分でどこまでが他人なのか。人によって差はあるのかもしれないけど、とても定義の難しいラインだと思います。僕もしばらく考えてはみましたが、結論がほとんど見えませんでした。

こういう問題も絡むから、現実化していない話なのだろうけど、そういうよくよく考えてみれば当然の疑問に想像力が及ぶ辺りはさすがだと思いました。