ヒトクイマジカル―殺戮奇術の匂宮兄妹(西尾維新)

ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹 (講談社ノベルス)

ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹 (講談社ノベルス)

永遠に生き続ける少女、円朽葉をめぐる奇怪極まりない研究のモニターに誘われた「戯言遣い」のぼくは、骨董アパートの住人・紫木一姫と春日井春日と共に京都北部に位置する診療所跡を訪れる。が、そこに待ち受けていたのは…。

物語に殉ずる。

進行上、登場人物の誰かが死ぬことは、物語上ではよくある話だと思います。それはその話の誰においても同じことなんだとは思うけど、それでも、魅力ある登場人物によってはシナリオを曲げてでも生き残るなんてこともあるのではないかと思います。作りかけの話の結末が変わって、結局ハッピーエンドに終わったりするのはまさにその産物とも言えるでしょう。そうなってしまうのも、作者の情が移ってしまったのかもしれないし、読者の情がそうさせるのかもしれません。しかし、それで結局本来のシナリオを曲げてしまうと、今度は別のところにしわ寄せがやってくるかもしれない…。なんてことがどこかではあると思います。

そこへ行くと、この話は徹底して「それ」がないように思います。そんなことは「クビシメロマンチスト」の時点でも感じてはいたのですが、今回改めてそれを思いました。物語のためなら誰であろうとも殺す。それはおそらく平等で厳格なものでゆるぎないものなのでしょう。登場人物にはまさに物語に殉死してくれと言わんばかりの展開。それが今回の印象でしょうか。まさに、「著しく情緒に欠けた、サービス精神の欠片もない、無味乾燥の物語だ」と言えると思います。

こんなんで本当、どう終わるんだろう。