虹を操る少年(東野圭吾)
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/07/14
- メディア: 文庫
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「光にメロディがあるの?」「あるさ。みんな、そのことに気づいていないだけさ」。“光”を“演奏”することでメッセージを発信する天才高校生・光瑠(みつる)。彼の「光楽」に、感応し集う若者たち。しかし、その力の大きさを知った大人たちの魔の手が忍び寄る。新次元コミュニケーションをめぐる傑作長編ミステリ。
都合のいい「絶対色感」ならほしいかな。
光を音楽のように演奏する、というのが今回の話の中心。それだけ聞くと少しファンタジーっぽくて、なんだかステキです。でも、それがおとぎの世界でならロマンチックで済んだのかもしれないけど、現実になるとそうも言えない。新しいものには、有害性を探そうとするし、まずは拒絶から入ってしまうというのが大人なのでしょう。そういう意味では、主人公の協力者の軸、反対者の軸、いくつもの視点があってバランスが取れていたなぁ、と。
ところで、終わり方はこれでいいのでしょうか。似たようなタイミングで終わったものを、以前にもどこかで読んだような気が……。
変身(東野圭吾)
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1994/06/06
- メディア: 文庫
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平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしょうもない。自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された悩の持主(ドナー)の正体を突き止める。
どう思いますか。
僕の知る限り、今のところ世界で行われたことのない脳移植という事例を扱ったもの。徐々に徐々に心が侵食されていくのが、描写でもわかります。
ところで、この小説に関して、ひとつ興味深いくだりがありました。それは「脳移植によって、自分の脳の一部が変化させられてしまったら、それは元の自分と同一でありえるのか」というところです。全部を変えてしまったら、確かにまったく違うものになるのでしょう。でも、もしそれが一部だったら。また、その一部がどのくらいの割合だったら。どこまでが自分でどこまでが他人なのか。人によって差はあるのかもしれないけど、とても定義の難しいラインだと思います。僕もしばらく考えてはみましたが、結論がほとんど見えませんでした。
こういう問題も絡むから、現実化していない話なのだろうけど、そういうよくよく考えてみれば当然の疑問に想像力が及ぶ辺りはさすがだと思いました。
心とろかすような―マサの事件簿(宮部みゆき)
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2001/04/18
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父親で所長の浩一郎、長女で短大卒業後、父親の許で女性調査員として働き始めた加代子、次女で美術の方面に進みたい希望を持っている高校生の糸子、それに前作で蓮見一家と親しくなった好青年、諸岡進也…お馴染みの人たちが遭遇する五つの事件。本書は、そこに登場する様々な人間たちの実像に、あくまでも真っ向から立ち向かおうとする彼らの活躍をマサの目を通して語る、初短編集である。
久しぶりに。
お金がなかったので、久しぶりに昔の本を引っ張り出して再読しました。なんというか、懐かしいです。あえて、考えることはできるけど人間とは言葉で意思疎通できない犬という視点からの描写というのはいまだ新鮮だと思います。そのせいか、どことなくコミカルに映るのだけど、それでいて扱うテーマは社会問題に関わっていたりするから油断できません。広げて考えようと思えば、いくらでも広がっていくところはあるんじゃないでしょうか。
秘密(東野圭吾)
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/05/10
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妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な"秘密"の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長篇、ついに文庫化。
最後の最後で。
映画自体は見たことないのですが、広末涼子が主演していて、っていうくだりをどこかで見かけたのを覚えていました。映画自体を見た覚えは皆無でしたが、途中の流れで、どこかで聞いた話だなぁ、って思った程度で読んでいました。そのせいか、今まで読んだ中では、比較的驚きも少なかったのです。けれど、最後に来て、ひとつだけ予想できなかったところを突かれて、「ああ、やられた」ってついつい思ってしまいました。
1973年のピンボール
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/11/16
- メディア: 文庫
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さようなら、3(スリー)フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との<僕>の日々。女の温もりに沈む<鼠>の渇き。やがて来る1つの季節の終りデビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く3部作のうち、大いなる予感に満ちた第 2弾。
連続。
先の投稿と同じくして、続けて読みました。「羊〜」「ダンス〜」へと続く、第二作目です。あらすじを説明しようとすると、どうもこの話の面白さが伝えられそうにありません。かといってうまい解説もちょっと思いつけなかったので、これは誰かにお願いしたいところです。でも、はまる人にはとてもはまりそうっていうのだけは読んでいて思いました。
ところで、個人的な話、村上春樹作品はとても好きってわけではないのです。むしろあまり好きなほうではない気がします。そのくせ、お店に置いてあると、どうも気になって手にとってしまうのです。心のどこかの何かをつかまれているのでしょうか。それが何かわからなくて読んでいるような節がある気がします。何度か読み込んで初めて理解できるのかもしれないですね。
風の歌を聴け(村上春樹)
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1982/07
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1970 年の夏、海辺の街に帰省した〈僕〉は、友人の〈鼠〉とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、〈僕〉の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。
不思議な話。
「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」へと続くシリーズの一作目。僕は、一作目と二作目をすっ飛ばして、「羊〜」とかのほうを先に読んでしまった口だったので、最初の最初はどういう感じだったのか気になって読み始めました。
デビュー作の頃からこの文体とか作風みたいのは健在だったのかと思うと、安心するやら、変わらないことのすごさを感じるのやらですね。