理由(宮部みゆき)
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2002/08/01
- メディア: 文庫
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荒川の高層マンションで起きた一家四人殺し。しかしそこに住んでいるはずの家族はほかの場所で暮らしていた。殺されたのは誰か、殺人者は誰なのか。事件はなぜ起こったのか。家が、家族が、そして人が徐々に壊れていく。
状況整理能力が問われます。
◇
ひとつの事件について、関係者はどれくらいいるのか。それがまして、大きな事件であればあるほど、その人数はとてつもなく多い。
理屈ではわかるけど、ここまでたくさんの人を登場させることができるものはそうはないと思います。何人もの人が証言をする中で、その内容が一致していたり、相反していたりすること、それが道理だ、と改めて気づかされます。一人一人の場合において、その人が見えるものは限られてるし、一面的であるのは当然のことで、そしてそのそれぞれに事情や背景といった理由が存在している。僕にしてみれば、そんなことを気づかせてくれる話でした。
ああ、本当、この人タイトルつけるのうまいなぁ。
青空のルーレット
- 作者: 辻内智貴
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/01/01
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青い空に浮かんで、俺達はビルの窓を拭く―メシを喰うために、家賃を払うために。けれど俺達はそれぞれやりたいことを別に持っている。音楽、芝居、写真、マンガ…。だから、俺達が窓を拭いているのは、夢を見続けるためなのだ!
夢を追う。
◇
「青空のルーレット」「多輝子ちゃん」の2作から構成。どちらもどちらでなかなかいい味が出ています。個人的には「青空〜」のほうが好きかもしれません。勝手な印象ですけど、「青空〜」は男の人のほうに、「多輝子ちゃん」は女の人のほうにより共感されそうな気がします。
久々に「いいこと言ってる!」って思う言葉がどんどん出てくる小説だったと思います。こういう言葉を心からなくさずに生きていければいい人生送れそうですね。
ネコソギラジカル (中) 赤き征裁VS.橙なる種(西尾維新)
ネコソギラジカル (中) 赤き征裁VS.橙なる種 (講談社ノベルス)
- 作者: 西尾維新,take
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/06/07
- メディア: 新書
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「――諸手をあげて、喜べよ」
人類の最終存在、橙なる種・想影真心を伴って、「僕」こと”戯言遣い・いーちゃん”の前に「狐面の男」は現れる。
バックノズル・ジェイルオルタナティブ……。
”運命”の最悪の傍観者たる彼が唱える”世界の法則”は、この世の”真理”そのものなのか!?
タイトルと内容は必ずしも一致するとは限らない。
◇
いよいよ、このシリーズも下巻を残すのみ、となりました。話は中巻なのですが、どう書こうとしても、多分ネタバレを起こしやすいので、書き方は抽象的にしておきます。それにしても、ここまで予想された結末をことごとくつぶしていけるってのもすごいものです。中巻のラストがああ落ちて、次のタイトルがアレですか?!って言うのも、またああ〜、と。
謎にしてたものはどこまで回収して、どこまで放置しておくんだろうなぁ、これ。
スローグッドバイ(石田衣良)
- 作者: 石田衣良
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/05/20
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さよならから始まる恋人たちの物語。
失恋して心を閉ざした女の子、セックスレスに悩む女性、コールガールに思いを寄せる男性など、「恋する人たち」をやさしい視点で描いた10編の物語。著者初の恋愛短篇集。
切ない。でも嫌じゃない。
◇
さわやかな表紙に惹かれて、思わず買い。ふたを開けてみれば、するっと読めて、心のどこかが弛緩するような、ちょっとしたエアポケットを突いてくるような作品群でした。こういうのを書ける人、尊敬しますねぇ。
笑顔の行方(シベリア少女鉄道 vol.13)
卒業アルバムの 最初の春のページ
無邪気に笑う私がいる…
蟹を食べてる私もいる…
稲を植えてる私もいる…
蓋を舐めてる私もいる…
嫁に媚びてる私もいる…
(中略)
もうあの頃の私じゃない…
決戦は金曜日… から…
友人の薦めにより見てまいりました。新宿の紀伊国屋サザンシアターでやっていた演劇です。もう今日で最終日なので、あらすじを言ってしまいますと。
恋人が暴漢に襲われて、記憶喪失になった主人公。警察は犯人の捜査をする一方で、主人公のことも疑っている。けれど、捜査本部の本部長はその被害者である恋人の父親。娘のことを溺愛している父親は、主人公のことを頑なに信じようとする娘の存在で、捜査は事実上進展はなくなっている。果たして、彼女を襲った犯人は一体誰なのか。そして主人公の記憶は元に戻るのか。
という話だったと記憶しています。
演劇を見るのは、大学の友達のサークルでやってる劇団のものを見た以外はまったくの初めてでしたが、独特の掛け合いはとても楽しいものでした。シナリオとして見ても、ちょっと時間が短くて話の収集が完全にはついていなかったかなぁ、とは思いましたが、いい感じに振り回されたような印象を覚えました。あと、言葉では表現しにくいのですが、犯人の推理のパートでのセリフと演劇の手法が見事に予想外だったのが、とても印象的でした。
機会があれば、また演劇は見てみたいものです。
流星ワゴン(重松清)
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/02/08
- メディア: 単行本
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ひきこもり、暴力をふるう息子、浮気を重ねる妻、会社からはリストラ寸前…そんな37歳・秋。「死んでもいい」と思っていた僕は、ある夜不思議なワゴン車に乗り、自分と同い歳の父と出会った。家族小説の新境地を拓く長編。
他人どころか家族でも心なんてわからない。
個人的には久しぶりにヒットしました。重松清さんの小説は今までに2冊しか読んだことないけど、多分こういう話を書かせるとかなりヤバイのだろうと思います。前は「舞姫通信」でヒットされました。人の生死とか、人生のやり直しとか、そういう言葉にピンと来たら読んでみるといいのかもしれません。
人生にはターニングポイント、というのが少なからず存在すると思います。それは、たとえば受験だったり、就活だったり、恋愛だったり、結婚だったり、それこそいくつかの「人生の波」と言われるようなタイミング、とでも言えばよいでしょうか。たいていの場合は、自分の選択の瞬間という奴なのでしょう。しかし、この作品においてのターニングポイントはまったく違います。それこそ、日常の中に潜んでいて、ふとしたことで見逃してしまうような場所にある、と言われているように思います。そんなことを考えたら、自分だって今までいくつも見逃してきたんじゃないかと思ってしまうのですが、この作品のようにその時間に戻ったりとかはできないので、自分の選択を信じるしかないのですよね。